歴史的事件とかかわりが深い佃煮のルーツとは
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東京でつくられた佃煮の歴史とは
・佃煮は江戸時代に佃島でつくられていた
佃煮の発祥の地は、江戸の佃島(現在の東京都中央区)です。400年以上前、この地に住む漁民が、江戸前(現在の東京湾)で獲れた小魚を甘辛く煮て食べていたことが始まりとされています。
離れ小島の佃島は、江戸前で漁業をするのに大変適した土地でした。佃島の漁民たちは江戸前で獲れた白魚を江戸幕府へ献上しており、残ったハゼなどの小魚や小エビ、貝類などを食べて暮らしていました。その際に生活の知恵として使われていた調理法が、小魚などを煮る方法です。
当時はもちろん冷蔵庫などがない時代ですから、佃煮は保存食として大変重宝されました。悪天候で漁に出られない時や、流通が止まってしまった時にも活躍したそうです。それからやがて佃煮は、保存が利くだけでなく美味しい料理として、日本全国にも広がっていきました。
・本能寺の変とつながりが深い食べ物
実は佃島の漁民たちは、もともとは関西の出身でした。なぜ彼らが江戸に移り住んで漁をし始めたかと言うと、あの歴史的大事件である本能寺の変にその理由があります。
天正10年(1582年)6月に、明智光秀の謀反が起こり、本能寺で織田信長が倒された時、徳川家康は大阪の堺にいました。一報を聞いた家康は、信長の盟友である自分の命も危ないと直感し、急いで三河の国(現在の愛知県東部)に帰ろうと考えます。しかし神崎川(現在の大阪市住吉区)に差し掛かった時、渡る船がなく立ち往生してしまいました。
その時、家康一行を助けたのが、摂津国佃村(現在の大阪市西淀川区佃)の庄屋・森孫右衛門と漁民たちです。彼らは手持ちの漁船と、いざという時のために備蓄しておいた小魚煮を家康一行に提供しました。この日持ちの良い小魚煮は、厳しい道中を急いで進まなくてはならない一行を、大いに助けたそうです。佃村の人々に大いに感謝した家康は、それ以来佃村の人々と結び付きを深めていきます。
・徳川家も愛した佃煮
徳川家康が幕府を開く時、佃村の森孫右衛門と30余名の漁民も江戸に連れていきました。そして幕府は鉄砲洲の東の干潟、百間四方(約180メートル四方)と、特別な漁業権を漁民たちに与えます。築島工事を行い漁民たちが移り住んだこの島は、彼らの故郷にちなんで「佃島」と名付けられました。
以来、漁民たちに保存食として作られていたあの佃煮は、美味しさでも有名になっていきます。調味料が塩からしょうゆになり、使う具材も新鮮な白魚など様々な魚を使うようになりました。やがて江戸に勤めている大名たちの食膳にも上がり、多くの人々の舌を楽しませるようになっていくのです。
・江戸のおみやげとして日本中に広がっていった
最初は漁民が自分たちで食べるために作っていた佃煮ですが、その保存性の良さや美味しさから、やがて商品として売り出されるようになりました。また住吉神社への参拝客に振る舞ったり、味自慢の佃島の料理として出したりしているうちに、次第に江戸で人気を集めていきます。
さらに、参勤交代によって、武士たちが江戸のおみやげとして持ち帰ることで、どんどん全国に広がっていきました。そうして現在では佃煮は全国各地で作られるようになり、伝統的な和食の代表として挙げられています。
佃煮に似てるけど由来によって名称が異なる
・しぐれ煮
しぐれ煮は佃煮の一種とも言え、たっぷりのしょうゆと千切りの生姜を加えて作る独特の味わいが特徴です。近年では「牛肉のしぐれ煮」「あさりのしぐれ煮」なども一般的になりましたが、もともとは「ハマグリのしぐれ煮」を指すものでした。ハマグリのしぐれ煮は三重県・桑名が有名であり、徳川家康にも献上されています。そのため、佃煮は関東、しぐれ煮は関西というイメージもあるようです。
「しぐれ煮」という名前の由来は、江戸時代の俳人が読んだ「神無月、降るみ降らぬみ、定めなき、しぐれぞ冬の、初めなりけり」という和歌だとされています。ハマグリの旬が初冬であることから、「しぐれ煮」という名前がつけられたのでしょう。
・甘露煮
実は甘露煮の由来は、中国とインドにあります。中国の古い伝説には、「甘露」という天から降る甘い不老不死の霊薬があり、一方インドには飢えを満たして渇きを癒し、長寿をもたらして死者をも蘇らせるという蜜のような甘い霊薬の伝説があります。この2つが合わさり、日本に伝わったものが甘露煮の語源です。
そのため、甘露煮は水飴や多めの砂糖を使い、蜜のように艶やかな見た目に仕上げていることが特徴です。味としては佃煮よりも甘く仕上げてあるものが多いでしょう。まるで、寿命が延びる甘い蜜のような美味しい料理だということを意味しています。
歴史を知って佃煮をおいしく味わおう
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